ソリッドモデルの起源
そもそも、ソリッドモデルという名称からわかるように、ソリッドモデルは、固まりである材料から作った飛ばない(動かない)ものということを前提にしている模型のことです。「Solid Model」または「Solid Scale Model」と呼ばれていることもあります。
現在、ソリッドモデルといえば、航空機の模型を指しますが、船舶やその他の乗り物の模型にもソリッドモデルが存在します。 ここでは、航空機のソリッドモデルに特化しています。ソリッドモデルというジャンルが確立されるまでの経緯を明らかにするため、ソリッドモデルの範疇に入らないと思われるものも含まれていることをおことわりします。
1908年~14年
最初の模型飛行機ブームは、1908年頃から第一次世界大戦開始(1914)までのイギリスで起こったとされています。その前ぶれとして、1903年に人が搭乗した飛行を成功させたライト兄弟がヨーロッパを訪問し(1909)、地元ヨーロッパではファルマンやブレリオの飛行、パリの航空展示会(1908)、さらにドーバー海峡横断飛行の成功(1909)などの出来事があり、全般的な航空熱の興隆がありました。
実物飛行機の成功や、次々に進歩・実現する記録的な飛行が背景にあった模型飛行機(飛ぶ模型)ブームでしたから、実機の姿に引っ張られる要素はあって当然です。従って、はじめに実物と同じ形の縮小模型飛行機、スケール・モデルが試みられました。これは実物の飛行機の存在が先行しているので、厳密な意味での「模型」「飛行機」になります。
しかしながら、お手本となった実機そのものが技術的に未熟な段階で、辛うじて飛行を成功させていた状況でしたので、それを同じく未熟な技術で外形的にまねをしても、飛ぶことはきわめて困難でした。そのため、実機の外形を真似した「模型飛行機」は、すぐに淘汰されて姿を消してしまいました。
「スケールモデル」としての飛行機の模型が一般化してくるためには、もう少し、時間を要すことになります。この時期は、飛行させたいのに『Static Model』にならざるを得なかったものもあるということです。
オリンピア航空展のスケールモデル
一般人の趣味としてではなく、職人の製品としての「スケールモデル」のコンテストが、1911年のオリンピア[1]航空展において実施されています。この時期の万博でも相当な技術的なレベルの工芸製品が見られますので、下記のような製品も可能だったと考えられます。1/24(1'=1/2")という縮尺が、再現性と合わせると興味深いことです。
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| これは、1911年のオリンピア航空ショーの技術部門1位の模型。 これは、G. P. Bragg Smith作の自動安定複葉機のスケールモデル。 | |
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| 技術部門2位 Bleriot XI 1/25 Willyboldt Birkinger作 |
1920年代
メディアの中のスケールモデル
「FLIGHT」の中で、スケールモデルを製作している模型クラブが存在していることが読み取れます。 (ソリッドモデルとして製作しているかどうかは、未確認)
スケールモデルのパーツ販売
“Xactus”のMoth用の1/40の木製パーツ販売の広告が、1929年代の雑誌に見られる。
1930年代
出版物
1933年に出版されているSTEVENS, James Hay著「Scale Model Aircraft」は、現在のソリッドモデルの基本といえる製作方法が記載されています。縮尺は、1/36または、1/72としており、第1次大戦機の三面図も記載されています。
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| 「Scale Model Aircraft」 STEVENS, James Hay著 John Hamilton Ltd. 1933 発行 |
内容は、現在のソリッドモデルの基本となるようなものです。しかし、本文には、ソリッドモデルの文字はありません。 |
ソリッドモデルキット
SkyBirdsは、英国においてA. J. Holladayのプロデュース、Stevens, James Hayのデザインによる1/72のスケールに統一された木とメタルの模型のキットである。 この当時の雑誌の広告には、“scale solid non-flying aeronautical models”(飛ばない固まりの縮尺航空機模型)と記述されています。
80種類ほどのキットが、1932年から45年まで生産されました。1/72は、この後のFrog社やAirfix社の製品の規格になりました。
| SkyBirdsのキット | |
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| SkyBirds Fokker D-vii | Airspeed Courierのキット |
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| SCALE PLANS OF MILITARY AIRCRAFTの広告 |
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| scale solid non-flying aeronautical modelsの記述 |
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| SKYBIRDSのジオラマ |
| Maircraft社のDouglas DC-3のソリッドモデルキット | | |
| 雑誌の広告 | キットの組立図 | キットの全容 |
ソリッドモデルキットの図面
| HAWK社 |
| Bristol Bulldog |
メディアの中のソリッドモデル
航空機関係の雑誌や模型雑誌にソリッドモデルの制作記事掲載され始めるのは、30年台半ばからです。
| 1941年6月号表紙 |
FLYNG ACESの1938年4月号の中に見られる「Solid Model」の文字(緑の下線)
1940年代
ソリッドモデル製作技術の書籍
「Solid Scale Model Aircraft」 J.H. Elwell著 1941年 英国
「Scale Model Aircraft」 V.J.G. Woodason著 1943発行
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| Scale Model Aircraft in Wood 1978年 改訂版 |
プラスティックの発明と戦時下の識別用模型の大量生産をプラスティックで制作していくことになり、急速に商業模型は、プラモデルに置き換わっていく。ソリッドモデルは、より精巧なフルスクラッチモデルの道を歩むことになる。
第2次大戦前の日本のソリッドモデル
模型製作技術の書籍
「實體飛行機模型の製作敎書」
| 「實體飛行機模型の製作敎書」 白木克良着 高千穂書房 昭和19 [1944] 187 p |
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目次 アートページ まえがき 第1章 実体飛行機模型の意義 第2章 実体模型の製作用具 第3章 実体模型用木材 第4章 製作準備工程 第5章 原型工程 第6章 部品製作 第7章 削成及び木地仕上げ 第8章 原型組立 第9章 塗料及び塗装 第10章 ラッカー塗装 第11章 組立完成 |
文中より 「従来玩具としてしか考えられていなかった実体飛行機模型も、大東亜戦争に入るに及んで有難くも軍の起用するところとなり、----敵機種の識別とその検討に、本模型の持つ効用は大きく且つ広くなって参りました」
「昭和十七年の第三回航空日に、海軍省軍務局第四課よりの下命で、吾が国最初の所謂ソリッド・モデル[2]のみの展覧会を銀座の某百貨店で開催----」
キットの販売
JNMC にしき屋飛行機店は、戦中にソリッドモデルのキットを販売している。
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| JNMC カタログ | キットの写真 | 価格表 |
