第2次大戦後のソリッドモデル
1940年代後半
第2次世界大戦中にプラモデルが生産されるようになり、戦後は、ソリッドモデルは、プラモデルに取って代わられることになりました。
ソリッドモデルキット
DYNA-MODEL PRODUCTS COMPANY
1946年創設の模型会社
初めてのソリッドモデルキットは、F8Fです。
COMET MODEL CO.
このパッケージは、どう見ても“P-38”ですが、“BLACK WIDOW”の文字が読めます。
箱の中は、P-61です。1945年製で、スケールは、1/64.An all-balsa, profile-cut kit と書かれているので、側面型は、切り抜いているキットのようです。
日本のソリッドモデルの隆盛
ターニングポイントは1948年
戦後、占領軍による、いわゆる「模型飛行機禁止令」[1]が発令されました。その結果、昭和23年(1948)くらいまでは模型機を飛ばすことは非合法活動になってしまったのです。そのあおりでソリッドモデルも禁止と誤解されていたようです。「模型飛行機禁止令」などによる数年間の空白の後、昭和23(1948)ころ、模型飛行機は解禁されて、競技会などの活動も再開されました。また、1951年は、航空禁止法が解除になり、日本の民間航空が再開しました。「航空ファン」もこの年に創刊されています。日本の子どもたちは、まさに、「模型解禁」の喜びに沸いたと想像できます。 昭和16年からの「模型飛行機教育」を受けた何百万人もの学童モデラーが戦後の日本の模型を推進する原動力になったことは、想像に難くありません。
メディアの中のソリッドモデル
『ポピュラ・サイエンス 模型飛行機篇」』1949(昭24)年6月 刊
| 「美しいソリッドモデルの作り方」[2] -美しくてかわいらしいソリッド・モデルは私たちの夢をのせて「大空の彼方こ運んでくれる- | |
|
ソリッドモデル(Solid model)というのは,ほんものの飛行機の形態を何分の一かに縮尺して,ほんものそっくりの外観を與えた模型飛行機のことである。もちろん飛行させるためのものではなく、眺めて楽しむのが目的であるから、特に軽く作る必要はない。従ってその構造も、飛ばす模型のように、軽い骨組の上にうすい布や紙をはったりしないで,木のむくで(即ちSolidで)作り、もっぱら外観が實機に近く、實機の感じを出すことに全力が注がれる。その意味でソリッド・モデルといってフライング・モデル(Flying model)と区別するのである。 |
|
| |
|
この後、「世界の航空機」、「航空ファン」に多くのソリッドモデル製作の記事が掲載され始めます。
1950年代
米国や英国のプラモデルが日本に入ってきました。当初、日本の玩具メーカーが自社の木工技術を使ってソリッドモデルを販売していましたが、すぐにプラモデルに置き換わっていきました。1951年発刊の航空ファンには、「ソリッドモデル」が模型の主役の座を得ていたことが読み取れます。この時期に全国にソリッドモデルのクラブが数多く創設されることになりました。日本のソリッドモデルが独特の発展を遂げていくのは、このようなソリッドモデルの位置づけによるものかもしれません(未確認)。
外国のメディアの中のソリッドモデル
Aeromodeller誌
1956年2月号~ Famous Biplanesシリーズ G.A.G. Cox著[3]
"a new series of stage-by-stage solid model articles on FAMOUS BIPLANES"
ソリッドモデル製作のための図面と製作技術解説して始まったシリーズでしたが、途中から図面と機体の説明が中心になっていきます。
| No. | 発行年月 | 機種名 | 備考 |
| 1
|
Feb-56
|
カーチスSBC-4 | ソリッド製作 |
| 2
|
Apr-56
|
フェアリー・ファントム | 〃 |
| 3
|
Jun-56
|
ボーイングF4B-4 | 〃 |
| 4
|
Aug-56 | Fiat CR 42 | 〃 |
| 5
|
Oct-56
|
アブロ 504 | 〃 |
| 6
|
Dec-56
|
アルバトロスD.Ⅲ/D.Ⅴ | 〃 |
| 7
|
Feb-57
|
ハンドレイ・ページ ヘイフォード | 〃 |
| 8
|
Apr-57
|
スパッド ⅩⅢ | 〃 |
| 9
|
Jun-57
|
ボールトン・ポール オーバーストランド | 〃 |
| 10
|
Aug-57
|
D.H.89a ドラゴンラピード | 〃 |
| 11
|
Oct-57
|
ブリストルF2b ファイター | 〃 |
| 12
|
Dec-57 | SE5A | 図面と説明 |
| 13
|
Feb-58 | カーチス・ホーク(P-6E/XF11C-2) | |
| 14
|
Apr-58
|
RE.8 | |
| 15
|
Jun-58 | グラマン・ガルフホーク | |
| 16
|
Aug-58 | de Havilland 60 Moth | |
| 17
|
Oct-58
|
ビュッカー・ユングマイスター | |
| 18 | Dec-58 | グラジエーター | |
| 19 | Feb-59 | RAF BE2E | |
| 20 | Apr-59 | British Bulldog | |
| 21 | Jun-59 | Vickers Vimmy | |
| 22 | Oct-59 | Supermarine Stranraer | |
| 23
|
Dec-59
|
Hawker Fury | |
| 23 | Feb-60 | Hawker Hart | No.23? |
| 24 | May-60 | Wright Flyer | |
| 25 | ? | ||
| 26 | Aug-60 | de Havilland 4 | |
| 27 | Nov-60 | Curtiss JN 4D | |
| 28 | Mar-61 | D H 82A Tiger Moth | |
| 29 | Sep-61 | Harold Kriers Great Lakes | |
| 30 | Feb-62 | Stearman PT 13 Kaydet | |
| 31 | Feb-63 | Breguet 19 | |
| 32 | Oct-63 | Beechcraft 17 | |
| 33 | Apr-64 | Douglas world cruiser | |
| 34 | Dec-64 | Boeing F4B | |
| 35 | Feb-66 | Fairey Swordfish | |
| 36 | Sep-68 | Curtiss SBC 4 |
タイトルに"a new series of stage-by-stage solid model articles on FAMOUS BIPLANES"の文字が読み取れます。また、本文中には、バルサ材の文字も読み取れます。
AIRCRAFT IN MINIATURE
W.O. Doylend著
The Model Aeronautical Press 1957
![]() |
CONTENTSIntroduction to a hobby |
![]() | |
ソリッドモデルとプラモデルの隆盛
日本においては1950年代後半以降プラモデルが隆盛していくのですが、ソリッドモデルは、頑なにオーソドックスなスタイルを貫くことになります。この背景になっているものは、不明ですが、「手作りの楽しさ」「ディテール」の追求が一因としてあげられます。全国のソリッドモデルクラブには、技術的にも人間的にも先導するモデラー[4]が存在しています。このようなカリスマ性が日本型のソリッドモデルのレベルを保っているといえるでしょう。個人の趣味でありながら、日本の模型界を代表する存在となり続けているわけです。
プラモデルの歴史
(出典はウィッキペディア)プラモデルの誕生
世界で最初に発売されたプラモデルは、フロッグのブランドで動力付きの木製模型飛行機を販売していたイギリスのLines Brothers社が、1936年に発売したフロッグ・ペンギンシリーズである。当時の新素材であったプラスチックで模型を作る技術は、イギリス軍が教育に使用する航空機や軍用車両等の識別用モデルをプラスチックで作る技術を応用したものである。フロッグ・ペンギンシリーズは1/72に統一された航空機のキットで、第二次世界大戦により中断されるまでに英国機を中心に30点ほどが発売された。
第二次世界大戦中にはアメリカ国内でもプラスチック製の識別用モデルは多数作成され、大戦が終結すると、ホーク、レンウォール等の複数のメーカーがアメリカでもプラモデルの製造を始めた。 1950年代に入ると、オーロラ、リンドバーグ、レベル、モノグラム等のさらに多くのアメリカのメーカーがプラモデルの生産を始め、ヨーロッパでもイギリスのエアフィックスやフランスのエレール等が活動を開始し、プラモデルは急速に普及していった。
フロッグやエアフィックスといったイギリスのメーカーの航空機キットが最初から1/72で統一されていたのに対し、アメリカのメーカーの初期のキットは箱のサイズに合わせた箱スケールのものが多かったが、1950年代後半以降スケールの統一の動きが進み、多くのメーカーが1/72とともに1/48(1/4インチスケール)を航空機の統一スケールとして採用し、むしろ1/48の方をメインとした。また、初期のプラモデルメーカーの多くが木製模型飛行機のメーカーであったこともあり、初期のプラモデルは航空機が中心であったが、1950年代半ば以降、艦船、戦車、自動車等のモデルも徐々に増加していった。そして1960年代は、欧米の多くのメーカーが数多くの名作キットを生み出す、プラモデルの黄金時代となる。
日本における歴史
日本にプラモデルが渡ってきたのはアメリカでプラモデルが普及を始めた1950年代初めで、主に在日米軍関係者によって持ち込まれたが、日本の木製模型メーカーの注目を得るには至らなかった。1956~57年になると少数ではあるが外国製のプラモデルを輸入して販売する店も現れ、玩具メーカーのマルサン商店や模型メーカーの日本模型などがプラモデル国産化への模索を開始した。国産初のプラモデルとなったのは、1958年(昭和33年)末にマルサン商店から発売された潜水艦ノーチラス号等4点のキットである。製品名の中には、「プラスティックソリッドモデル」という名称をつけるものもあった。
三共製作所[5] F-11 プラスティックソリッドモデル
1950年代後期から1960年代は、戦記映画の人気や雑誌・出版物での第二次世界大戦戦記特集に後押しされた軍艦や飛行機などの実物の縮尺模型が主だったが、1960年代後半の今井科学(後のイマイ)による「サンダーバード」シリーズの大ヒットによりキャラクターモデルという分野が確立した。
その後のスーパーカーブーム、ブルートレイン・エル特急ブームでもプラモデルはブームの一端を担った。
日本のメディアの中のソリッドモデル
図解 ソリッド・モデルの作り方
野沢正著 1956年 モデル・ファン・ライブラリイ刊行会 103頁 A5判
| |
目 次
ソリッド・モデルとは |
| 表紙 |
「航空ファン」誌のソリッドモデル記事
1950年代に航空ファンに盛んにソリッドモデルの制作記事が掲載され、全国的なブームの推進役になっていきました。その後、1960年代にも製作記事は、見られますが、ソリッドモデルよりもプラモデルの製作記事が多くなってきます。
| |
|
| 航空ファン 1955年11月号 | 大町雅美氏の記事 P81 |
| |
|
| 航空ファン 1965年5月号 | 高見保市氏の記事 P135 |
出典:(株)文林堂 航空ファン 1955年11月号 P81
出典:(株)文林堂 航空ファン 1965年5月号 P135
ソリッドモデルの製作技術書
「ソリッドモデル工作の入門」は、航空ファンに連載されていた記事をまとめたものです。
小橋良夫、下采 直、大町雅美、土屋敬三氏の記事を収録。
大町雅美氏の記事については、ソリッドモデルの製作記事を参照
| |
目次 工作の準備 図面と縮尺 零式艦上戦闘機の作り方 日の丸セーバーの作り方 大型旅客機の作り方 全金属零戦の作り方 プラモデルの作り方 図面のはなし 世界軍用機のマークと塗装 三面図 メッサーシュミットBf109F MkⅧスピットファイアー P-40N、Fw190、P-47D、P-51D B-52D、MIG19、ファルツDr-1 ソッピース・キャメル |
| ソリッドモデル工作の入門 |
|
「ソリッドモデルの工作」小橋 良夫著 誠文堂新光社 1964
| |
目次 工作に必要な材料・工具と技術
|
ノースアメリカンF-86Fセイバー 零式艦上戦闘機52型 モーリス・ファルマン1914年型 スパッド13型戦闘機 特殊攻撃機 橘花 ロッキードF104J栄光 ライアン・スピリット・オブ・セントルイス 二式ニ型戦闘機 鍾馗 メッサーシュミットMe-109 |
| ソリッドモデルの工作 |
1960年代
日本以外では、1960年代には、ソリッドモデルの記事がほとんど見られなくなりました。
一方、日本では、1960年代になってもソリッドモデルの記事が航空ファン等の雑誌に掲載されていました。
1980年代
「Model Aeroplanes of World War I: design and construction」1987年 Goodchild, Graham著は、ソリッドモデルの技法が多数見受けられるスクラッチビルドの技術書である。
| |
|
| Model Aeroplanes of World War Iの表紙 |
Model Aeroplanes of World War Iの内容 |
脚注
- ↑ 後年の分析に拠れば、米軍が意味する「模型飛行機」は、風洞実験模型のような実機の開発を目的とする「模型」であって、ホビー/スポーツとしてのものは指していなかったのです。
- ↑ 筆者名はありませんが、文中に「私たちが苦労して設計製作した航研機」という記述があり、またこの別冊本の編者となっていることからも、木村秀政教授に間違いありません。これらの内容につきましては、柄澤英一郎氏から情報をいただきました。
- ↑ これらの記事につきましては、柄澤英一郎様に情報をいただきました。
- ↑ ここでは、個人名を挙げるのは、差し控えます。
- ↑ 三共製作所は1959年YMC出身の松尾 時太郎氏が設立した会社。オールプラスチックモデル と銘打ち、箱には プラスチック ソリッドモデルとの記載がある。fckLR発売になったのはfckLR ・1/96.4 零戦 ・1/120 F-102 ・1/120 F-100 fckLR ・1/138 F-11F-1F の4機種である。
参考文献
- “MODEL-PLANES” 模型飛行機篇 ポピュラ・サイエンス 1949(昭24年)
- G.A.G. Cox Aeromodeller “Famous Biplanesシリーズ” Model&Allied Publications Ltd 1955-1968
- W.O. Doylend AIRCRAFT IN MINIATURE The Model Aeronautical Press 1957
- 野沢正 図解 ソリッド・モデルの作り方 モデル・ファン・ライブラリイ刊行会 1956
- ソリッドモデル工作の入門 (株)文林堂 1960
- 航空ファン (株)文林堂 1955,1965
- 小橋 良夫 ソリッドモデルの工作 誠文堂新光社 1964
- Goodchild, Graham 「Model Aeroplanes of World War I: design and construction」 1987



